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環境シリーズ  その2 
「ノーマイカーデー」 を お 得 に 楽 し も う
― 北九州市の環境政策の取組 ―
環境に良い行動が、お得になる仕組
↑北九州市環境局が年3回発行し、全戸配布している情報誌「北九州市発環境情報誌かえるブレス35」より
☆ ブログ(この問題を取り上げた理由、社会の変革、反対だけではならずにてご意見・ご感想をお待ちしております。

● 地元商店街、交通事業者、市の思惑一致で役割分担

 環境モデル都市である北九州市は、市内のCO2排出量の約1割を占める自動車環境対策の一環として、昨年11月から今年2011年3月まで毎月第2、第4水曜日に「ノーマイカーデー」を実施。マイカー通勤者やマイカーを利用して買い物をされる方々が環境にやさしい自動車や公共交通機関等を利用して市内の商店街、飲食店などに来店された場合、「お得な特典」が受けられるキャンペーンを行った。 

 北九州商工会議所の後援を得て、市内の企業や商工会議所にマイカー通勤などを自粛するよう依頼して、約50社の協力を得た。
(市のホームページ「
特典が受けられる店舗(参加店舗ぞくぞく増加中!!」参照)

 北九州市の平成22年度環境モデル都市予算の総額は、154事業、約44億2千万円(うち新規40事業、約14億円4千万円)。その内、ノーマイカー推進事業の予約額は100万円だ。


 「ノーマイカーデーは、福岡市が1992年に導入するなど既に全国の自治体で実施されている。ただ、北九州市では、公共交通機関の便が悪い港湾部や24時間勤務の職場が多いなど、産業都市ならではの事情で、導入が遅れていた。環境局によると、市内に通勤する人の約6割が自家用車を利用しており、「月に2回、1割でも減る日があれば大きなCO2削減につながる」(同局)という。
『2010/10/09付 西日本新聞朝刊』

 「市環境モデル都市推進室によると、07年度からノーマイカーのキャンペーンを市内のイベントに合わせて数日間実施することはあったが、恒常的なノーマイカーデーを設定するのは初めて。今回は来年3月までの実施で、調査・分析をした後に11年度中に再開する。水曜日としたのは、定時に退社する「ノー残業デー」を水曜日に実施する企業が多いからという。市内のCO2排出量は、工場など産業部門が66%と最も多いが、自動車や電車などの運輸部門も9%あり、マイカー利用を減らすことでCO2削減を進めたい考えだ。

 ノーマイカーデーには現在、市役所以外に企業約50社の参加が決まっている。参加者には飲食や買い物で割引などの特典が受けられるような仕組みも設ける予定だ」。

毎日新聞 2010年10月26日 地方版

● 環境に良い行動が「お得になる仕組み」

 2008年4月30日初版日刊工業新聞社発行「環境首都 北九州市」第6章「できることから“温暖化”を考える〜地球を救ういろいろな取り組〜」の中で、市の環境局環境管理かエネルギー政策係長(当時)・柴田泰平さんは次のように記している。

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 3 バスや電車で市場に行こう! 〜ノーマイカー得々キャンペーン

 ・ノーマイカーディの矛盾

 わが国には約8,000万台もの自動車があり、その数はこの40年間で約10倍に増えている。自動車の二酸化炭素削減は重要な課題だが、その対策として、自動車の単体対策(燃費向上等)、エコドライプなど様々なものがある。そのうち自治体で多く取り組まれているのは、「公共交通機関の利用促進キャンベーン」で、その一つに「ノーマイーディ」がある。
 この事業により、直接的な温室効果ガスの削減効果が見込めるものの、全国的にも、大きなムーブメントになっていない。北九州市都市環境管理課の梅下係長は、こう分析する。「そもそもノーマイカーディには大きな矛盾がある。ノーマイカーディの日に公共機関を利用した人は、満員の電車やバスに揺られて会社や買い物に行かなれればいけない。一方、自家用車で来る人は、当日は渋滞も少なく楽に目的地に着くことができる」。つまり、環境に良い行動が「お得」になる仕組みがないのである。

 ・北九州の台所旦過市場での実践

 小倉北区の旦過市場は、大正時代から続くれ式ある市場だが、最近では、ネット販売を取り入れるなど、新しいことにも積極的に取り組んでいる。市場では、北九州市立大学の竹川教授からアドバイスを受け、活性化を目指した勉強会を開催しており、その中で“環境”を“売り”の一つとしていくことを考えていた。そん中、市から得々キャンペーンに関する提案を受けた。
 市のアイデアは、「公共交通機関の切符を見てると、値引きが受けられる」という仕組みである。地元商店街、交通事業者、市それぞれの思惑が一致し、話はスムーズに進んだ。
 本事業のポイントは、「値引きの原資は個々の商店がすべて負担すること」にある。市は、キャンペーンのチラシを作成し、交通事業者は駅や車内での吊り広告などで広報する。三者それそれれが役割分担した。
 そして、市場は集客向上、交通事業者は利用者増、市としては、環境対策商店街振興、都市交通対策と、関係者がそれぞれの価値を見出したwin win事業となった。2007年の秋のキャンペーン当日、旦過市場では来場者は倍増、売り上げは40%増となった。今後も引き続き実施する予定である。

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 “「ノーマイカーデ」をお得に楽しもう”キャンページは、単なるモラルに訴えるのではなく、環境に良い行動が「お得」になる仕組み作りの試みだった。
● 自家用利用削減がCO2削減に有効、しかし、モラルキャンペーンだけでは・・・・・

 左図は、2011年4月に発表された国立環境研究所温室効果ガスインベントリオフィス(日本゜の排出量集計のための機関)の家庭からの2009年度の二酸化炭素排出量(用途別)だ。世帯当たりCO2排出量の約3割が自家用乗用車。

 環境省もこのデータに基づき、「「移動」を「エコ」に。Smart Move」を「チャレンジ25キャンペーン」の中で掲げている。当団体も賛同団体として登録している。キャンペーンは次のとおり。

 通勤・通学・買い物・旅行など、私たちは、毎日どこかへ出かけます。そんな日々の「移動」を「エコ」にする。新たなライフスタイルの提案です。
 日本の目標である温室効果ガス排出量25%削減を達成するには、日々の生活での行動の見直しが欠かせません。
 特に、「移動」に伴うCO2排出量は生活分野全体の3割を占めており、「移動」を見直すことは大きな意味があります。
 そこで賢い移動、CO2排出の少ない移動にチャレンジし、地球温暖化防止を促進するため、「smart move」を提案します。
 「smart move」はCO2削減のみならず、「健康」、「快適」などにも寄与する新たなライフスタイルの総称です。

 誠にもっともなキャンペーンである。
 
 1992年のリオの地球サミットから来年で年目を迎える。以来、Think globally, act locally地球的視野で考え、身近なところから取り組む)の合言葉で、世界中で様々な環境への取組みが行われたが、未だに解決策は見出されいない。

 単なるモラルキャンペーンでなく、「環境に良い行動が得をする」ようなシステム作りができないだろうか?
                                            
● 誰もがお得になる、Win-Winのシステム ― 北九州市のごみ制度
 98万都市北九州では1998年から家庭ごみの有料化を行っている。更に、2006年から4倍の値上げをして、「有料化とあわせ、実際に市民が減量・資源化に取組を組み合わせる」施策を行った。
 その結果、2003年度の基準年と比較し、23億円を削減することに成功している=右図(゛2010年11月15日発行北九州市発環境情報誌「かえるプレス」35号)
 
 「一工夫すればごみは減らせる、負担も少なく済む」
 「多くごみを出す人に多額の税金を使っていることは不公平だ」という声が上がった。

 それまでの道は簡単ではなかった。この料金改定に関して苦情・要望が殺到。1ヶ月間、市の職員スタッフは課長以下18名で対応したが、朝7時から夜10時まで、4回線増設した回線がふさがりばなしだったという。市民説明会は累計1,300回を超えた。
 新制度には、1万3千人を超える市民と市職員(1,552人)が協働して、10日間にわたって朝6時半から8時半まで「ごみだしマナーアップ運動」を実現させた。

 「家庭ごみの減量・リサイクル フォローアップ委員会」を設置した。メンバーは環境NPO・環境活動を実践している市民5名、公募市民6名を含む計22名。
 委員会では「市民は行政にあれもこれもしてほしいと望むばかりでいいのか。市に要望することは、私たちの税金を使うことになることを考える必要がある「「市民の琴線に触れる、気持ちをかきたてる取り組みが必要」「ごみを減らすことは、市民・行政・そして地球環境の、誰もがお得になる、Win-Winのシステムとなるはずだ」といった意見が出されたという。
 そうした市民の声が市政に反映されているようだ。
                                   参考資料 「環境都市 北九州市」(北九州市環境首都研究会編著」
                                        2011年5月 文責:高橋
☆参考サイト
曜日別ノーマイカーディのすすめ
北九州市自動車環境対策推進協議会
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